金の武器と銀の武器と、その他もろもろの何か
「私は湖の精霊です。なにかお困りのようですが、どうかされたのですか？」
-人間不信-
ビュウ「ああ！ 俺の双剣が！」
精霊「あなたが落としたのはこのグナイゼナウ（右手側）ですか？
それともグナイゼナウ（左手側）ですか？」
ビュウ「……なぜ二つに分ける。両方とも俺のだよ」
精霊「あなたは大変欲張りな方ですね。貴方に差し上げるものはありません」
ビュウ「いや、双剣だから二本で一組だし！ 嘘じゃないって！」
精霊「嘘つきはみんなそう言うんです」
ビュウ「どんな過去があったのかは知らんが本当だっての」
-正直者≠善人-
ラッシュ「ああ！ 俺の剣が！」
精霊「あなたが落としたのはこの金の剣ですか？ それともこの銀の剣ですか？」
ラッシュ「どっちも違うぞ」
精霊「では、あなたの落としたのはグランベロス帝国でも一本筋の通った人格者の武人であるアーバインを
数の暴力で圧倒し、間接攻撃の集中砲火で弱らせた後に欲しいアイテムが出るまで
殺害→リセットを繰り返すという、血も涙も無い行いの末に手に入れたエクスカリバーですね」
ラッシュ「人を極悪人みたいに言うな！」
精霊「違うのですか？」
ラッシュ「……ここで嘘をつくと剣が返ってこないってオチか？」
精霊「もちろん」
ラッシュ「……そのエクスカリバーが俺のです」
精霊「あなたは正直な方です。ですが、悪人なので剣は返しません（ぽいっ）」
ラッシュ「だったら最初から聞くなよ！」
-報われない正直者-
トゥルース「ああ！ 私の剣が！」
ばちばちばちばちっ！
精霊「あなたが落としたのは……ごほっ……このスパークブレイドですね？ ごほっ、ごほっ」
トゥルース「ええと、その……はい、すみませんでした」
精霊「正直なあなたには私が受けたのと同等の電撃を差し上げましょう」
トゥルース「正直に言ったのに罰ですか！？」
精霊「ええ、正直に言っても罰です」
-在庫処分-
ビッケバッケ「ああ！ 僕のお菓子が！」
精霊「あなたが落としたのはこのしっぱいクッキーですか？ それともこのにがいおもいでですか？」
ビッケバッケ「僕が食べてたのはてづくりクッキーだけど……」
精霊「あなたは正直な方ですね。ご褒美に全て差し上げましょう」
ビッケバッケ「……嫌がらせ？」
-本人は本気-
マテライト「ああっ！ ワシの斧が！」
精霊「あなたが落としたのはこの金の斧ですか？ それともこの銀の斧ですか？」
マテライト「ワシが考案したナイスなデザインの斧じゃ」
精霊「……センスのないデザインの斧しか落ちていませんでしたが」
マテライト「それはワシのではないな。ちゃんと探したのか？」
精霊（どこからその自信が来るのかしら……）
-あの人の思い出-
タイチョー「ああっ！ 自分の斧が！」
精霊「あなたが落としたのはこの金の斧ですか？ それともこの銀の斧ですか？」
タイチョー「違うでアリマス。古びた鉄の、最愛の妻の形見の斧でアリマス」
精霊「……奥さんの形見ですか？」
タイチョー「そうでアリマス。
目を閉じれば、戦場でセリーヌが斧を振り回している姿が浮かんでくるでアリマス」
精霊（……どういう人だったんだろう……すっごい気になる……）
-計画通り-
バルクレイ「ああっ！ 俺の斧が！」
精霊「あなたが落としたのはこの金の斧ですか？ それともこの銀の斧ですか？
それともこのマテじるしオノですか？」
バルクレイ「……金の斧です」
精霊「あなたは嘘つきです。あなたに差し上げるものはなにもありません」
バルクレイ「しょうがないな」
アナスタシア「あれ？ あの趣味の悪い斧はどうしたの？」
バルクレイ「不幸な事故によって無くなった。いや実に残念だ」
アナスタシア「顔が笑っちゃってるわよ」
-綺麗な泉を守ろう-
グンソー「ああっ！ 私の斧が！」
精霊「無礼者！ 泉が穢れる！」
グンソー「そこまで言わなくてもいいと思いますけどね……（ボリボリ）」
精霊「それ！ それが汚いのよ！」
-一攫千金-
ルキア「ああっ！ 私の小剣が！」
精霊「あなたが落としたのはこの金の小剣ですか？ それともこの銀の小剣ですか？」
ルキア「うーん、ダイヤを散りばめたプラチナの小剣だったかしら」
精霊「わかりやすい欲深ですね、あなたは」
ルキア「チャンスがあるなら乗りたくなるのが女心じゃない」
精霊「気持ちはわからないでもないですけど没収ですから」
-とばっちり-
ジャンヌ「ああっ！ 私の小剣が！」
精霊「あなたが落としたのはこの金の小剣ですか？ それともこの銀の小剣ですか？
それともこの自称純情硬派のプレイボーイ、ドンファンですか？」
ジャンヌ「……なんか私の時だけ選択肢がおかしくないか？」
精霊「私は落ちてたものを拾っているだけですよ」
ジャンヌ（ここで正直に答えたらドンファンに気があると思われるかも……
でも私の小剣が返ってこないのも困るし……どうすれば……）
精霊「時間切れです。優柔不断なあなたには、残念ながら差し上げるものはありません」
ジャンヌ「あ……くっ……」
精霊「では――」
ドンファン「ちょっと待……ガボゴボ……」
ジャンヌ「あ」
-意地悪精霊様-
ミスト「ああっ！ 私の小剣が！」
精霊「あなたが落としたのはこのエタンダール（命中100％）ですか？ ヴァンピネラ（吸収）ですか？
それとも存在を忘れられる事なくカーナの仲間と共に戦っていたあの頃ですか？」
ミスト「！！ （ここは正直に……）私が落としたのは、カッサンドラ（毒属性）よ」
精霊「あなたは正直者ですね。ご褒美にこの二振りの小剣も差し上げましょう」
ミスト「……『存在を忘れられる事なくカーナの仲間と共に戦っていたあの頃』は？」
精霊「返ってくるとでも思っていたのですか？（ぷっ）」
ミスト「悪魔か、あんたは！？」
-彼の価値観-
レーヴェ「ああっ！ ボクの槍が！」
精霊「あなたが落としたのはこの金の槍ですか？ それともこの銀の槍ですか？」
レーヴェ「『ランランランサー！』ができるならなんでもいいです！」
精霊「……正直者なんだけど、なんか渡したくないなー」
-いまだ冷戦中-
フルンゼ「ああっ！ ボクの槍が！」
精霊「あなたが落としたのはこの金の槍ですか？ それともこの銀の槍ですか？」
フルンゼ「レーヴェのとすり替えてあらぬ疑いをかけようと細工した槍です」
精霊「また正直者だけど……これ、返していいものかしら」
-災いを呼ぶ口-
ドンファン「ああっ！ ボクの槍が！」
精霊「あなたが落としたのはこの金の槍ですか？ それともこの銀の槍ですか？」
ドンファン「ボクが落としたのは槍なんかじゃないよ。ボクが落としたのは……キミだ」
精霊「…………？」
ドンファン「そう、キミはこのドンファンとの恋に落ちたのさ」
精霊「……自分に正直なあなたは、一度振り返ってみるといいでしょう」
ドンファン「…………？」
ジョイ「いい天気ですね（にっこり）」
ネルボ「ご機嫌いかがですか？（にっこり）」
ドンファン「…………ドンファン、ピ〜ンチ！」
-綺麗？ な泉を守ろう-
ゾラの息子「ああっ！ ファーレンハイトのトイレを掃除したばっかりのボクのモップが！」
精霊「危な、危ないっ！ ……セーフ！ 落ちてません！ ギリギリでキャッチです！」
ゾラの息子「おおー。どこのどなたかは存じませんが、ありがとうございました。
危うく大事なモップが汚い泉に落ちてしまうところでした」
精霊「それ以上泉を侮辱したらタダじゃおかねぇー」
-性悪精霊様-
ゼロシン「あ、自分の忍剣が」
精霊「あなたが落としたのはこの金の忍剣ですか？ それともこの銀の忍剣ですか？」
ゼロシン「どちらでもありません。自分が親友（ビュウ）から譲り受けた忍剣です」
精霊「あなたは嘘つきです。あなたに差し上げるものはなにもありません」
ゼロシン「いや、嘘じゃないですけど……」
精霊「『親友』ではありません。現実を見ましょう」
ゼロシン「…………」
-アサシンのお仕事-
サジン「……む。俺の忍剣が……」
精霊「あなたが落としたのはこの……あれ……なんか身体が……？」
サジン「その剣には痺れ薬が塗ってあるわけだが」
精霊「……善意で拾ってあげたのに……あんまりな仕打ちじゃありませんか？」
サジン「事故だ。まあでもせっかく痺れたのだから殺」
精霊「そんな理由で殺さないでください！」
-ご褒美という名の嫌がらせ-
メロディア「あ、プチデビが泉に落ちた」
精霊「あなたが落としたのはこのきれいなプチデビですか？ それともこの頭の良いプチデビですか？」
メロディア「私が落としたわけじゃないけど、普通（？）のプチデビだったよ」
精霊「あなたは正直者ですね。ご褒美にこの二匹のプチデビも差し上げます。
さらにここに用意したさまざまな種類のプチデビをみんな差し上げましょう」
メロディア「わーい、ありがとー♪」
メロディア「――ってことがあったの」
ビュウ「連れてきた全員、泉に放り投げて来い」
-追い討ちはおまけです-
アナスタシア「ああっ！ 私の杖が！」
精霊「あなたが落としたのはこの何の変哲も無いサンダーロッドですか？
それとも某ヘビーアーマーからプレゼントされたサンダーロッドですか？」
アナスタシア「……何の変哲も無いサンダーロッドよ」
精霊「あなたは正直者ですね。可哀想ですけど。
でも、私が上げても私からのプレゼントになってしまいますし。可哀想ですけど」
アナスタシア「それは私にケンカ売ってるってことでOK？」
精霊「同情ですよ。早くプレゼントとかされると良いですね（ぷっ）」
アナスタシア「いい度胸ね。この泉を蒸発させてあげるわ」
-現実と妄想の境-
エカテリーナ「ああっ！ 私の杖が！」
精霊「あなたが落としたのはこの何の変哲も無いドラッグロッドですか？
それとも某操舵士からプレゼントされたサンダーロッドですか？」
エカテリーナ「ホーネットさんからプレゼントされたドラッグロッドですよ」
精霊「あなたは嘘つ――」
エカテリーナ「嘘じゃないです！ ちゃんとプレゼントされました！」
精霊「え？ いやだってそんな事……」
エカテリーナ「疑うんですか？ 私の勘違いだって言うんですか？」
精霊「あの、目が怖いんですけど……」
エカテリーナ「絶対プレゼントされたんです。そうに決まってます。記憶に無くても決定事項です」
精霊「…………もうそれでいいです」
-思惑-
ネルボ「ああっ！ 私のドンファンさんが！（投げ）」
ドンファン「なぜに！？」
どっぽ〜ん！
精霊「あなたが落としたのはこのプレイボーイで浮気性のドンファンですか？
それとも真面目で誠実なドンファンですか？」
ネルボ「プレイボーイで浮気性のドンファンさんです」
精霊「あなたは正直者ですね。ご褒美に両方のドンファンを差し上げましょう」
ネルボ「じゃあ、真面目で誠実なドンファンさんを私が貰って――」
ジョイ「待ちなさい！ そっちは私のよ！」
ドンファン「何気にボクの人格を否定されてる気がする」
ドンファン「それ以前に増えたことは驚かないんだね」
-人の話は聞きません-
ゾラ「あ、私のロッドが……」
精霊「あなたが落としたのはこの金のロッドですか？ それともこの銀のロッドですか？」
ゾラ「あらあらあなた、そんなところにいちゃ風邪引くよ！」
精霊「え？ いえ、その……」
ゾラ「何があったのかなんて聞かないからさ。まずはそこから上がって温まりな」
精霊「そうじゃなくて、私は……」
ゾラ「見たとこあんたはまだ若いんだ。人生まだまだやり直せるじゃないか」
精霊（悪意が無いのがまた……）
-たまには善行-
ディアナ「あ！ 私の噂話帳が！」
精霊「あなたが落としたのは人に多大なる迷惑をかけるであろう噂話の記載された手帳ですか？
それともみんなの役に立つ情報が書き込まれた手帳ですか？」
ディアナ「私以外の誰かに多大なる迷惑をかけたり人間不信を巻き起こしそうな情報満載の手帳よ」
精霊「……あなたは正直者ですね」
ディアナ「まあね」
精霊「ですが、これは責任を持って私が処分しましょう」
ディアナ「なんで！？」
ビュウ「ありがとうございます。これはつまらないものですが」
ラッシュ「よくやってくれた。感動した」
精霊「いえ、人として当然のことをしたまでのことですよ」
ディアナ「……あんたら、後で覚えてなさいよ」
-薬……？-
フレデリカ「あ……私のクスリ箱が……」
ぷかぁ
精霊「…………」
フレデリカ「なんか浮いてきましたね。
……大丈夫ですか？ 治療なら5000ピローで承りますけど」
精霊「……原因は……あなたじゃないですか……」
-計画阻止-
ジョイ「ネルボあぶないっ！（タックル）」
ネルボ「きゃーっ！？」
どっぽ〜ん！
精霊「あなたが落としたのはこのウィザードのネルボで魂胆は読めてます。
よってネルボのレベルを10ほど増やして返してあげましょう」
ジョイ「……え゛」
ネルボ「ジョイ、覚悟は良いわね……？」
-殺伐と-
ヨヨ「きゃーっ！」
どっぽ〜ん！
ビュウ「ヨヨ様！（余計な手間を……）」
パルパレオス「ヨヨ！（危ないところには近づくなと……）」
精霊「この勝手に足を滑らせて落ちてきたのは
1.数年前に某隊長と思い出の教会に行った（入ってないけど）頃と同じ気持ちのままのカーナ王女
2.某隊長を裏切って別の人物と思い出の教会に入った大人になるって悲しいことなのなカーナ王女
ちなみに今回は特例で、選んだ方を差し上げましょう」
ビュウ「……退け、パルパレオス」
パルパレオス「……断る」
ビュウ「俺は本気だ。今の俺に斬れないものはないぞ――」
パルパレオス「…………断る！」
精霊（他人の不幸は蜜の味……♪）
-譲り合いの精神-
センダック「ああ〜」
どっぽ〜ん！
ビュウ「……お前行け」
ラッシュ「……隊長の役目を果たせ」
精霊「早く引き取りに来てくださいよ」
センダック（……わし、沈んでる……）
-本日の営業は終了しました-
ラッシュ「ああ！ また俺の剣が！」
…………
ラッシュ「無視かよ！」
-おまけ-
精霊「あなたが落としたのはこのパルパ……」
ビュウ「何も落としてないから何も拾わなくていいぞ」
―おしまい―