チョコ分
「我々はなんだっ！」
『我々は新興行事撲滅委員会っ！』
「我々の使命はっ！」
『人心を惑わせる新興行事の撲滅！』
「我々の敵はっ！」
『菓子屋の謀略に加担する者ども！』
「ならば我々の取る道は一つ！」
『我らの敵に鉄槌を！』
「よろしい、ならば共に行こう！」
『応！！』
そんなお話。
「ターゲット発見！」
新興行事撲滅委員会が最初に視界に捕らえたのは、バルクレイであった。
無論、艦内でこのバカップルのことを知らない人間はいない。
「なんだなんだ！？」
バルクレイが驚くのも無理は無かった。
新興行事撲滅委員会（以下新滅委）の面々は全員鬼の面をかぶっているのだ。
そんな連中が殺気立って目の前に現れれば、いかに非日常に慣れていても驚くのは当然だろう。
「我々は新興行事撲滅委員会！」
「菓子屋の謀略によって作られた新興行事を打ち滅ぼす者なり！」
「おとなしく裁きを受けるがいい」
「……それはあれか、バレンタインに反対とかそういうことか」
異様な雰囲気ではあるが、目的がわかったところでバルクレイはほっとする。
恒例といえば恒例であったし、なんとなく展開が想像できない事も無かった。
「ふっ、そのように言葉を濁さない者に手加減は無用！
人為的に作られた偽りの行事を楽しむ愚か者め！ 正義の鉄槌を食らえ！」
委員長の号令一つ、すぐさま展開してバルクレイを取り囲み、逃げ道をふさぐ。
そして、各々手に持った小さな木のマスから何かを投げつけ始める。
「何を投げているのか知らないが……完全武装のヘビーアーマーを倒せると思うのか？」
「すぐに後悔することになるさ。全員、休むなよ！」
訓練の前なのか後なのか（さすがに現在は戦闘待機中では無い）バルクレイは鎧を着ていた。
さらに彼は『ディフェンス』で物理ダメージを無効にできるヘビーアーマーである。
それでも連中は手を休めることは無かった。防がれても弾かれても無視して、次から次へと投げつけていった。
「ヘビーアーマーの防御力を甘く……甘く……甘い？」
直撃は無いものの、鎧や兜が弾いたものが時折顔や鎧の中に飛び込んできていた。
最初は警戒していたのだが、あまりの軽さに無警戒になったバルクレイの口元に一つ飛んだのだ。
「……何を投げてるんだ？」
「麦チョコだ。鎧の中でどろどろに溶けて悲惨な目にあうがいい！」
「ちょ、待……」
種明かしと同時に一斉に飛び掛り、鎧の隙間から詰められるだけの麦チョコを詰める。
いくら防御力があっても、スピードに劣るヘビーアーマーではこの攻撃をかわすことはできなかった。
「一体なんだって言うんだ……」
「我々は新興行事撲滅委員会。菓子屋の謀略に踊らされる者に鉄槌を」
「古よりある節分という行事の大切さをかみ締めるがいい」
麦チョコを撒いても節分の大切さが伝わるとも思えないが、本人たちはいたって満足そうである。
鎧の中が悲惨なことになっている被害者を置いて、新滅委は次のターゲットを探しに行った。
「ターゲット発見！」
運の悪い二人目の犠牲者は艦内一のプレイボーイ（自称）ドンファンであった。
もっとも自称するだけあって、その手に提げた紙袋には本日の成果である数々のチョコレートが入っている。
まさにターゲットにふさわしい獲物であった。
「な、なんだお前ら！」
「我々は新興行事撲滅委員会！」
「菓子屋の謀略を滅し、古の行事の重要性を諭す会！」
「なんだかよくわからんが……理不尽な横暴には抵抗するぞ」
ドンファンは紙袋を置き、襲撃に備えて構える。
素手ではあるが、彼とて戦士。そうそう後れは取らないはずだった。
「その程度で防げるとでも思っているのか？」
「何？」
構えるドンファンに新滅委の委員長はすっと手を上げ合図を送る。
そして、先ほどと同様に取り囲み、いっせいに麦チョコを投げつけ始める。
「痛てててて……痛て？ あれ、痛くないぞ？」
「麦チョコだからな」
「何を撒いてるか！？ あ、鬼の面ってことは節分のつもりか？」
「ないがしろにされた節分の怒りをその身で感じるがいい！」
とはいえ撒いているのは麦チョコ。威力は雀の涙である。
徐々にヒートアップしてきたのか、新滅委のメンバーの額に汗がにじんできた（見えないが）
「……いい加減にしたらどうだい？ 正直、痛くも痒くもないんだが」
「その余裕がいつまで続くかな？ 自分が罠にはまっているとも知らずに」
「罠……だと？」
確かに、ドンファン自身は額から汗するほどに息苦しいような熱気を感じていた。
目の前の鬼の面をした連中は、それほどまでのプレッシャーを放っているというのだろうか。
「出まかせだな。こんな短時間で……」
「その額の汗が証拠だ」
「…………？」
ドンファンは言っている意味を理解できなかった。プレッシャーを感じることが罠だとでも言うのか。
握った拳にも汗がじわりとにじんでくる。そして――いつの間にか相手もあごから滴るほどに汗をかいていた。
「…………暑いだろう」
「暑い……？ まさか！」
ドンファンは地面に置いた紙袋に目を向けると、紙袋自体が熱気を帯びてしなだれていた。
さらに紙袋に入ったり、あたりに散らばったりした麦チョコも溶けて悲惨なことになっている。
この分だと中身も無事とはいえないだろう。チョコだし。
「この通路の空調はこっそりいじらせてもらった！ 麦チョコ撒きはただの時間稼ぎだ！」
「おおおおおっ！？ なんてことしてくれるんだ！」
「はっはっは、さらばっ！」
「待てー！ くっそ、こんなくだらない手を使うのはラッシュだな！」
一人取り残されたドンファンの声を背に、新滅委のメンバーは散り散りに逃げていった。
鬼の面をつけて豆撒き用のマスを手にした集団が走っている光景はシュールだった。
しかし、あえてその連中を呼び止める声があった。
「見つけた！ 止まりなさい！」
「何奴！？」
「あんたらね、チョコもらった人間を片っ端から襲撃してるのは！
女性陣を代表して、荒事担当の私たちが始末してあげるわ！」
「荒事担当って……ディアナはともかく、なんで私まで……」
「フレデリカ以外はみんな嫌がったからしょうがないじゃない」
「……私が嫌がってないとでも……？」
不満の目を向ける相方を無視し、ディアナは新滅委のメンバーをざっと見渡す。
誰に話しかけるかしばし考え、とりあえずリーダー格らしいのの目星をつけた。
「あんたが元凶ね」
「委員長と呼んでくれ」
「……あんたラッシュでしょ。今回は何が目的なの？」
「ラッシュ？ 誰のことだ？
俺は新興行事撲滅委員会の委員長。名は捨てた」
鬼の面こそしてるものの、ボイスチェンジャーの類は使っていなかった。
ついでに鎧こそ着ていないものの私服なので、わかる人間が見ればすぐにわかる。
「他人の振りするつもりなら声ぐらい変えたら？」
「そうよ。ディアナなら声だけですぐわかるんだから」
後ろから余計な合いの手を入れてきたフレデリカにすぐさま反応し、その頭をわしづかみにする。
「あんたいちいち私にケンカ売って楽しい？」
「それなりに……って言いたいけど、痛いからやめとく……」
ディアナはフレデリカの頭を解放し、再びラッシュ……いや、委員長に向き直る。
「で、目的は何なの？」
「菓子屋の謀略により生まれた人心を惑わせる新興行事の撲滅だ」
「……早い話がバレンタインデーにチョコをもらった連中に嫌がらせをしたいのね」
「さらにないがしろにされている古よりの行事、節分の復権にも力を入れている」
「鬼が豆撒いてどうするのよ」
「豆ではない。麦チョコだ」
「一番伝統行事をないがしろにしてるのはあんたらだ」
どこからツッこんでいいのかわからなくなり、激しい虚脱感が襲ってくる。
そもそも目的なんて聞くまでも無かったような気もしてきた。
「フレデリカ、どうしようか？」
「どうするって……やめさせるんでしょ。方法は知らないけど」
「方法……は無いことも無いけど」
自分で言ったのだが、ややためらいがちに懐からラッピングされた長方形のアイテムを取り出す。
「これをあの中の一人にあげれば、あとは放って置いても瓦解すると思う」
「……こんなキッカケなんか待たないで、素直に渡してればそもそもこんな騒ぎにならなかったのに」
「別に渡そうと思って用意してたわけじゃないってば」
「しっかりとラッピングして準備までしてたのに？」
「も、もしもに備えてよ」
それはどんなもしもなのか。
「いいからおとなしく
『こ、これはあんたのために作ったわけじゃないんだからね！ ついでよ、ついで！』
とか言いながら意中のあいつに渡せばいいでしょ。早く」
「だからそんなんじゃないって言ってんでしょ、この仮病娘！」
「仮病じゃないもん」
新滅委のメンバーがすっかり逃げ去ってしまっていたことに二人が気付いたのは、しばらく後のことだった。
「ところでディアナ、ラッシュ以外に誰がいたかわかる？」
「へ？ まあ、大体いつもの感じのメンバーじゃない？」
「はっきりわかるのは一人だけなのね」
「……いちいちいちいち人の揚げ足ばっかり……」
「これは墓穴って言うのよ」
「大変だ、委員長！ ビュウに勘付かれた！」
最も警戒しなければいけない人物（ホーネットを除く）がついに動き出した。
さっきの二人とは違い、こちらは実力で排除しに来るだろう。メンバー内にもわずかに動揺が走る。
「安心しろ、策はある。ビュウがきたら俺に任せろ」
普段以上にリーダーシップを見せるラッ……委員長。
もしもビュウと別部隊にいたら、隊長格になれたのかもしれない（補佐は無理だし）
程なくしてビュウがその姿を現した。日頃のストレスからか、早くも殺気をみなぎらせて。
「……ただでさえ色々とめんどくさい一日なんだ。少しおとなしくしていてもらおうか」
「俺たちには俺たちの使命があるんだ。退くわけにはいかない」
気圧されるメンバーを尻目に、委員長はすっとビュウの前に出る。
そして、一触即発の雰囲気の中、委員長が紡いだ言葉は――
「次のターゲットはパルパレオスだ」
「よし、協力しよう」
＊なんと！ ビュウが仲間になった！
「よし、行くぞ！」
『応！』
「ターゲット発見！ パルパレオスだ！」
「よし、行くぞ！」
委員長よりも率先して駆け出すビュウ。一応彼も鬼の面をつけている。
「！？」
一方のパルパレオスは事態が飲み込めないものの、ただならない雰囲気を察してとっさに逃げ出した。
その背中を猟犬よろしくビュウが追い、さらにその後ろから新滅委のメンバーが追う。
「挟み撃ちにするぞ！ 回りこめ！」
委員長は大声でそう指示を出してから、近くの一人にこっそりと耳打ちする。
「ポイントCに誘い込め」
「ここであの仕掛けを？」
「今使わないでいつ使うんだ」
「了解しました」
全力でビュウが追い、メンバーも散開しながら追うものの、パルパレオスはなかなか捕まらない。
ビュウのスピードもなかなかのものだが、パルパレオスもほぼ同等のスピードで逃げているのだ。
もっとも、そのおかげで委員長の目論見どおりに事が運んでいることを、二人は知らなかった。
「そろそろ観念しろ、パルパレオス！」
「……何事かはわからんが、ろくなことじゃなさそうだな」
おおむねパルパレオスの勘は当たっていた。日常茶飯事と言ってしまえばそれまでだが。
そして、委員長以下数名のメンバーはてぐすねを引いて待っていた。
「委員長、二人がポイントに接近中」
「OK。タイミングは俺が取る」
じっと息を凝らしてポイントを確認し――絶好のタイミングでラッシュは親指を下に向ける。
瞬間、パルパレオスとビュウの足元にぽっかりと穴が開いた。
『なっ！？』
クロスナイト同士声をハモらせて、足元の落とし穴へと落ちていく。
突然の事に目を白黒させていると、頭上から上機嫌（面はつけているが）の委員長が見下ろしてきた。
「くっくっく……油断したな」
「どういうことだ！ ターゲットはパルパレオスだろ！」
「ビュウ、まさかお前はターゲットになってないとでも思ったのか？ やれ！」
号令とともにどこに用意していたんだというくらいの大量の麦チョコが投擲される。
「この程度で……」
「二人仲良く埋まれ」
「埋めるのかよ！？」
「大丈夫だ」
委員長はそこで言葉を止める。この間にも麦チョコの流れは止まらない。
「おい、大丈夫な根拠を説明しろ！」
「きっと大丈夫」
「説明になってねえー！」
「おい、本気なのか！？」
「冗談だと思いたいが、多分あいつは本気だ」
抗議を当たり前のように聞き流し、数分後にはきっちり埋葬作業は終わった。
そんな傍若無人な彼らにも、終わりの時は訪れる。
「そこまでよ！」
「またお前か。邪魔だ、どけ」
立ちふさがるディアナを軽く手であしらおうとするが、その手をがっしりと掴まれてしまう。
「今回は助っ人がいるのよ」
「助っ人？ 俺たちを止められるやつなんて……」
委員長の言葉も終わらぬうちに、助っ人が通路の影からその姿を現した。
「許さないよ……」
「ビッケバッケ……？」
「食べ物を粗末にするなんて……ゆ・る・さ・な・い！」
ビッケバッケは本気だった。
その気迫は数多の戦場を駆け抜けてきた男に負けを悟らせる。
「なるほど、俺たちの負けのようだな」
委員長は鬼の面を外し、その正体をさらす。もちろんラッシュだ。
ラッシュは戦いにすらならないだろう、と判断したのだ。
自分一人ならともかく、共に戦ったメンバーを犬死させるわけにはいかない。
「目が覚めたぜ。そうだな、食い物を粗末にしたのは俺が悪かった」
「本当に、反省してる？」
「ああ、すまなかった。もっと違う手段を考えればよかったな。
いまさら遅いかもしれないが……俺たちの撒いた麦チョコはちゃんと回収してドラゴンの餌にするよ」
「わかってくれればいいんだ……モグモグ」
怒りの解けたビッケバッケとラッシュは満足そうな笑みを浮かべて和解の握手を交わした。
残りのメンバーもそんな二人の様子を拍手で祝福する。ディアナとフレデリカは微妙な表情を浮かべていたが。
「それじゃ……ぐえっ」
「何勝手にいい話で終わろうとしてんだ？」
委員長の背後から凄絶な笑みで首に腕を回してきたのはビュウだった。
あの麦チョコの山をどう抜けてきたのかはわからないが、ほんのりカカオの匂いが染み付いている。
「今回の件は今ので片がついたはずだぞ」
「黙れ。あの程度のオチで終われると思ったのか？
さて、食い物を粗末にすることの愚かさを知ったお前らにちょうどいい仕事があるんだ……」
冷や汗をかくラッシュを補足したまま、残りのメンバーにも視線を巡らせてビュウは微笑んだ――
「……なんだこの異臭は」
連れて来られた部屋で、ラッシュは開口一番そう言った。
「ここに廃棄されてしまいそうなかわいそうな食材がいっぱいあるんだ」
「食材って言うか……チョコだろ。失敗作の」
ざっと見渡す限り、女性陣ががんばった結果であろう残骸が至る所に残されていた。
ここがごみの廃棄所ではなく厨房だと気付くのに少しばかり時間を要す程度に。
「全部食えよ」
「無理だ」
「全部食えよ」
「む、無理だって」
「全部食えよ」
「……せ、生命の危険が……」
「全部食えよ」
「…………」
ビュウのプレッシャーに完全に負け、ラッシュは観念する。
やるだけやったので完全燃焼してしまったのかもしれないが。
無論、逃げそびれたメンバーにも拒否権は無い。
ラッシュ「……そろそろ俺は死ぬかもしれん」
ビュウ「安心しろ。そのために救護班を用意した」
ディアナ「……みんなの努力に対して、ビュウも大概失礼よね」
フレデリカ「私のはちゃんとしたものですから、安心して食べてくださいね♪」
ディアナ「どうせ危ないクスリでも入ってんでしょ」
フレデリカ「危なくは無いですよ」
ビュウ「……クスリを否定してくれ」
トゥルース「私は巻き込まれただけなので、ラッシュどうぞ」
ラッシュ「嬉々として罠を考案したトゥルースが先に」
トゥルース「いやまあ、あくまで実行したのはラッシュですし」
ラッシュ「ビュウ、お前を埋めたのはこいつの罠だぞ」
ビュウ「いいから押し付けあってないで早く食え」
サジン「俺はここまでだ……」
ラッシュ「おい、毒物に耐性のあるアサシンが倒れたぞ！？ やばいって！」
ゼロシン（いっそ死んだ振りを……いや、それじゃ結局生き返らせられるだけか……）
ビュウ「救護班ー」
フレデリカ「クリーンアップとリタンシブルのどっちです？」
ラッシュ「さらっと聞くんじゃねえ！ 一体何作ったんだ！」
ディアナ「チョコ」
ゼロシン（ここはがんばってアピールして、友人を作る夢を……ええい、ままよ！）
トゥルース「アサシンが死ぬチョコって……」
ディアナ「人聞き悪いわねー。死んでないでしょ」
ゼロシン「ぐふぅっ！」
ラッシュ「死んだぞ！？」
ディアナ「あ、それ当たり。メロディアの『ビッグ・バン・チョコ』の試作品よ」
トゥルース「ハズレの中にまたハズレがあるなんて……」
レーヴェ＆フルンゼ『ランランランサー、ヤリヤリ！』
ラッシュ「踊ってないでお前らも食えよ」
レーヴェ＆フルンゼ『ランランランサー、ヤリヤリ！』
ラッシュ「……お前ら？」
レーヴェ＆フルンゼ『ランランランサー、ヤリヤリ！』
トゥルース「め、目が死んでる……」
よろよろと力なく廊下を歩く影に、ディアナは周囲に他に人がいないのを確認して近づく。
「お疲れさん」
「……背中を叩くな。吐かなかったのが奇跡なんだ」
うめくような声を上げながらやつれた顔で振り返る元委員長。
「結構な量あったのに、よくもまあ五人で平らげたわね」
「ビュウの目がマジだったしな。あー、しばらくチョコは見たくねえ」
「そう、残念ね」
ラッシュに見えるようにラッピングされた包みをくるくると器用に指で回す。
その包みを見て、ラッシュの顔に急に生気がよみがえった。
「それはまさか、あれか？」
「片付けの功労賞も含めてのつもりだったけど……チョコなんて見たくないのよね？」
「貰えるものは貰う……いや、ありがたくいただきたい」
「しょうがないわねぇ。はい、感謝してよね」
「おう、感謝感謝」
「素直に渡せばいいのに」
「な、なんでここにフレデリカがいるのよ！」
「そりゃ、厨房出てすぐ追っかけてけばねー」
「……他言無用よ」
「それはディアナの心がけ次第かなー」
「ぐっ……」
後日、フレデリカにこき使われるディアナの姿に、皆が不思議に思ったとかなんとか。
―おしまい―